大判例

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東京高等裁判所 昭和27年(ラ)409号 決定

よつて按ずるに、本件記録編綴の仮処分決定正本(記録第六丁)によれば、長岡簡易裁判所が抗告人主張の債権者抗告人、債務者松村鶴蔵間の仮処分命令申請事件において、昭和二十七年十二月八日、抗告人主張の趣旨の仮処分決定をしたことが認められ、また同記録編綴の仮処分決定正本(記録第七、八丁)によれば、新潟地方裁判所長岡支部が抗告人主張の申請人松村鶴蔵、被申請人抗告人間の土地立入禁止仮処分事件において、同年十二月十三日、抗告人主張の趣旨の仮処分決定をしたことが認められる。そして右前後の仮処分決定が、同所二百四番の一については、同一土地に関するものであることは抗告人の主張自体に徴して明らかである。さすれば前の仮処分決定は、抗告人において、右土地に立入り家屋を建築しうることを前提として、松村鶴蔵がこれに立入り抗告人のなす建築を妨害することを禁じたにかかわらず、後の仮処分決定は、右土地に対する抗告人の占有を解いて、これを執行吏の保管に附し且つ抗告人が該土地に立入り家屋を建築することを禁じたのであるから、右二つの仮処分決定は、右土地に関するかぎりその内容において相牴觸するものといわなければならない。しかも本来後の仮処分決定をもつて前の仮処分決定を取消すことは許されないものと解すべきであるから、前の決定に牴觸する仮処分決定はこれをなしえない筋合であつて、新潟地方裁判所長岡支部のなした前記仮処分決定は、長岡簡易裁判所のなした前記仮処分決定に牴触するかぎりにおいて不適法であること勿論である。しかしすでに仮処分決定がなされた以上、決定そのものは仮処分異議等の方法によつて取消されないかぎり、当然無効であるということはできない。しかも債務名義の執行を委任せられた執行吏は、その債務名義の実質的な有効無効を審査する権限がないのであるから、相牴觸する二つの仮処分決定の執行を委任された場合においても、その決定の内容に立入り、その有効無効を審査し、自己の判断によつてその一を択んでこれを執行することは許されないものといわなければならない。そして執行吏が時を異にして二つの仮処分決定の執行の委任を受けた場合、特別の事情のないかぎり、その受理の順序によつて執行を実施すべきものと解するのを相当とする。しかも本件記録編綴の不動産立入禁止並建築妨害禁止処分執行委任拒絶書(記録第九ないし第十一丁)によれば、新潟地方裁判所執行吏斎藤利範は昭和二十七年十二月十三日、債権者松村鶴蔵の代理人弁護士宮内量平より、後者の仮処分決定の執行を委任せられ、同日これを受理し、同月十五日その執行を了したので、同じく十五日抗告人の代理人弁護士棚村重信より前者の仮処分決定の執行を委任せられたけれども、すでに執行吏において右土地につき債務者の占有を解き、これが保管する以上は、債務者は勿論債権者もこれに立入ることを禁止せられたものと解すべきであるから、当事者を反対にした同一内容の仮処分の要がないこと、右債務者による家屋の建築が禁止せられている以上は債権者の建築妨害はありえないこと、同一目的物に対する相牴触する仮処分決定の執行はこれをなしえないものであること等を理由として右抗告人の代理人に対しその執行委任を拒絶したことが認められる。さすれば仮処分決定の執行について特別の事情の認められない本件においては、仮りにすでに委任を受けている後者の仮処分決定の執行をする前に、前者の仮処分決定の執行の委任を受けたとしても、右執行吏がその委任受理の順序にしたがい、後者の仮処分決定の執行を実施し、抗告人の委任を拒絶して前者の仮処分決定の執行を実施しなかつたのは正当であるといわなければならない。したがつて抗告人の右抗告理由はこれを採用することができない。

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